複雑なものを理解する方法:階層性
概要
ものを理解するには、「階層性」という考え方が便利です。知りたいものを階層にわけることで、構造がスッキリしてわかりやすくなります。
具体例
1.ヒトのからだ:階層性、じつは学校で習っています
階層性という概念。じつは、学校で習っています。
生物の授業に出てきた「ヒトのからだの階層性」です。こんな感じの話をおぼえていませんか?
ヒトのからだは30兆個の細胞からできている。いくつかの細胞が集まって、組織を構成する。いくつかの組織が集まって、器官を構成する。いくつかの器官が集まって、器官系を構成する。いくつかの器官系が集まって、個体を構成する。
たとえば、心臓。
心臓は筋肉のかたまりです。平滑筋組織からできています。そして、平滑筋組織は筋細胞の集まりです。
心臓と血管をあわせて循環器系といいます。
じつは階層性を学校で習っていたんですね。
ヒトのからだは30兆個の細胞から構成されています。もし階層性という見方をしなければ、ヒトのからだを理解することはできないでしょう。同じようなものをまとめて、一つのカタマリとして扱うことで非常にわかりやすくなるのです。
2.デジタル回路:パソコンは宇宙人がつくったのではない
パソコンというのは宇宙人がつくったもののように感じられます。かしこすぎる。
実際、現在のコンピュータの原型を考えたジョン・フォン・ノイマンという人は、IQ300超えで「火星人」と呼ばれていたという。
だから、ずっと「ぼくみたいな凡人には、パソコンの中身はわからない」と思っていました。
しかし、ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ 第2版 | Sarah L. Harris, David Money Harris, 天野 英晴, 中條 拓伯, 鈴木 貢, 永松 礼夫 |本 | 通販 | Amazonを読んで、「階層性」という考え方を知り、パソコンの中身がすこし理解できました。
ここではレジスタの作り方を紹介します。申し訳ありませんが、パソコンの中身については本を読んでください。
[作成中]
デバイスの動作の詳細を見ない。入力・出力関係だけを見るようにする。:ブラックボックス化することで、より複雑なものを設計できるようになるのですね。
3.細菌のからだ:創発とは階層を上がること
生き物とそうでないものの違いはなんでしょうか?
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) | 福岡 伸一 |本 | 通販 | Amazonでは「動的平衡」だといっています。
1940年代に米国の科学者ドルフ・シェーンハイマは、放射性同位元素で印をつけたアミノ酸をマウスに3日間食べさせました。そのアミノ酸の半分以上は瞬く間に全身に広がり、脳、筋肉、消化管、肝臓、脾臓、血液など、あらゆる臓器や組織を構成するたんぱく質の一部になっていました(「動的平衡」の中の人間|ブログ|当院のブログコンテンツ|癌・難病・アンチエイジングの【健康増進クリニック】 (kenkou-zoushin.com))
細胞は変わらないが、細胞を構成するタンパク質は絶え間なく入れ替えられているのです。このようすを「動的平衡」と呼んでいます。
細胞はタンパク質からできています。細胞は生き物です。では、タンパク質単体は生き物なのでしょうか?生き物ではありません。
細菌を例に説明しましょう。細菌は単細胞生物です。細胞壁と細胞膜で囲われたなかには、DNAとリボソームが入っています。DNAはからだの設計図です。リボソームは、DNAに書かれたタンパク質を製造します。
DNAだけでリボソームがなければ、タンパク質をつくれません。DNAとリボソームがあっても細胞膜がなければ、つくったたんぱく質はどこかへ流れていってしまいます。
DNA・リボソーム・細胞膜・細胞壁がそろってはじめて、動的平衡が可能なのです。これら4種の構成要素が単独で存在していたときには持ち得なかった「動的平衡」という機能が、4種の構成要素が合わさったときにはあるのです。これを「新機能の付加」と呼びましょう。新機能の付加は複雑系科学という分野では「創発」と呼ばれます。
動的平衡ができるかできないかという観点で、細胞は生き物でありタンパク質は生き物ではありません。
創発の前後ではまるで別物なのです。階層が変わったとみてよいでしょう。
参考、というかすべて:生物のからだはどう複雑化したか (ゲノムから進化を考える) | 団 まりな |本 | 通販 | Amazon
4.アリとテントウムシとアブラムシ:経済学は生物学だと思う
こちらのサイトを見てください。
テントウムシはアブラムシを捕食します。
アブラムシはお尻から甘い蜜を出して、アリに提供します。アリにとって、アブラムシは蜜製造機なのです。だから、アリはテントウムシからアブラムシを守ります。
アリが単独で存在していたときやテントウムシが単独で存在していたときには無かった相互作用が、合わさったときには有ります。階層が上がったとみてよいでしょう。
例3・例4より、「ヒトのからだの階層性」はもっと拡張できます。
生態系ー個体群ー個体ー器官系ー器官ー組織ー細胞ー細胞小器官ー分子ー原子ー素粒子
階層性の観点から見れば、科学の各分野は
原子ー素粒子:物理学
分子ー原子:化学
生態系ー個体群ー個体ー器官系ー器官ー組織ー細胞ー細胞小器官ー分子:生物学
生態系ー個体群ー個体:経済学、社会学
に相当すると思います。